ladies-and-gentlemen-the-rolling-stones先日『悪人』を観まして、主演二人をはじめ俳優陣の演技は、評判どおりまことに素晴らしかったのですが、脚本がどうも趣味じゃない。以前観た『空気人形』に近い印象で、世知辛さや人間関係の切なさを、ああも直球で語って演出するのは興がさめるのです。とくに後半、名優・柄本明にあり得ない台詞を言わせてます。「誰が悪人か」という問いかけはよいのだけど、映画そのものは図式的でわかりやすい。そこが一般的にはアピールしやすいし、作品と関係なく問題提起が広がるテーマなので、その点で価値ある映画でしょう。とにかく、個人的には筋や展開よりも俳優の演技にグッときた作品でした。
それはそれとして、理屈抜きで楽しめたのは、後日観たThe Rolling Stonesの『Ladies & Gentlemen』。今どきのライブ映像にくらべて、雑な音声と演出性の希薄なカメラワークに時代性がにじみでてましたね。70年代前半の彼らの映像をあまり知らないからか興奮もなおさらでして、とくに大活躍のチャーリー・ワッツと、周りを目配りしながら神経質そうに弾きまくるミック・テイラーが印象的でした。大画面で観る「Love in vain」「Midnight Rumbler」はもう格別。あとは超定番の「Jumping Jack Flash」。この曲の意味のない歌詞が大好きで、全盛期のミックが歌う姿は、今の世の悪人善人なんぞどうでもよくなるぐらいカッコよかったです。
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